CONTENTS people#32 北川光宏・裕美子

大きなテーブルをプロット、 人が集まる公民館のような家

ある若い夫婦が住まう、茅ヶ崎の一軒家。
家を建てている時からずっと、ふたりの構想には、吹き抜けの天井が気持ちいい空間のまんなかに、大きな無垢のテーブルがあった。 これがそっくり実現した今、ふたりの周りには……

もしもそばにメジャーがあれば、試しにのばしてみるといいだろう。幅200cm、奥行き90cm、高さ71cm。北川さんちにゆうゆうと鎮座ましますテーブルのサイズは、夫婦ふたり(のちに赤ちゃんひとり)で使うにはあまりにも、とてつもなく大きい。キッチン、リビング、ダイニング、ベッドルーム、そのすべてをまかなうなら決して広くはない約36㎡のスペースに、となればなおのこと。「家を作っている段階からテーブルは、人がたくさん集まって楽しく過ごせるために、この部屋の中で最大のサイズにしようと思ってたんです」

テーブルと北川光宏さん

素材は無垢のナラ、天板や脚もどっしり感のある、厚みのあるほうがいい。家具屋さんでこれぞというものを見つけたけれど予算が合わず、ならばと自分たちで作ることにした(のがすごい)。新木場まで出向いて木材を調達し、いろんな人のアドバイスをもとに少しずつ。手間も時間もかかったぶん、存在感も愛くるしさもたっぷりの、大きな大きなテーブルが完成した。「横に3人並べるようにしたかったんです。2人じゃなくて3人。この大きさだったらバランスがいいね、と話していたら予想通りにできて」。

かくして、大テーブルのある生活が始まった。一番の変化は、人を呼ぶのに躊躇しないから、近所の友だちを集めて、しょっちゅうごはん会が企画されること。ワールドカップのときにはびっくりするほどの人が大挙して押し寄せ、試合前に対戦国の料理を食べて闘志を燃やしてから、観戦に臨んだ。

テーブル、オープンキッチンのカウンターにフローリング、玄関ドアもナラ材で統一。この日集まったのは大人、子ども、赤ちゃん合わせて総勢13人。家じゅうの椅子に、ソファーまで総動員させてテーブルを囲む。お皿もたくさん並べられて。
テーブル、オープンキッチンのカウンターにフローリング、玄関ドアもナラ材で統一。
この日集まったのは大人、子ども、赤ちゃん合わせて総勢13人。家じゅうの椅子に、ソファーまで総動員させてテーブルを囲む。お皿もたくさん並べられて。

また手作りものの教室として開放されることもたびたびあった。パンやビーズアクセサリー、クリスマスリースまで。天板いっぱいにお花がてんこ盛りになっているようすを見ながら、このテーブルでよかった、と改めて思ったという。

そう、北川家はまるで公民館のような様相を呈している。

もちろん、ふだん3人でいるときも威力を発揮する。ごはんはもとより、図面を書いたり、パソコンでブログを書いたり。同じテーブルにいて、まったく違う作業をすることもよくある。集中できるけれど、気が向けばおたがい「どう?」ってすぐに話しかけられる、適度な距離感。「確かにふたりにしては大きすぎかもしれないけれど、広々としたところを余裕で使うと、余白の部分っていうのかな、すごくいい効果になって、リラックスできるんです」とは、ご主人の光宏さん。奥さんの裕美子さんも「子どもが生まれてからは、何でもここでできるので、いつでも目が届くのもいいですね」。

1Fの寝室が工房になりかわり、ベッドは自動的に2Fのリビングへ。しかし子どもができた今となってはむしろ便利。隣にマットを敷いてベビーコーナーに。

1Fの寝室が工房になりかわり、ベッドは自動的に2Fのリビングへ。しかし子どもができた今となってはむしろ便利。隣にマットを敷いてベビーコーナーに。

1Fの寝室が工房になりかわり、ベッドは自動的に2Fのリビングへ。しかし子どもができた今となってはむしろ便利。隣にマットを敷いてベビーコーナーに。

はてには、このテーブルが手作りと知った人が「うちも!」と光宏さんにオーダーし、週末はそんな彼らのために家具作りに明け暮れているという。重なる経験と、広がる繋がり。それもこれもすべては、このこっくりツヤと味わいが出てきたテーブルから。もの言わぬまま、でもたんまりと、運と縁を運んでいる。

北川裕美子(きたがわ・ゆみこ)

北川裕美子(きたがわ・ゆみこ)

海の近くの一軒家づくりのプロセスをサイト『LUCCA』のYUMIとして、克明にリポートしたものが話題に!今も家具づくりやものづくり、育児や日々の暮らしなどを綴っている。
http://www42.tok2.com/home/lucca/

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