
共通の趣味である手芸をキーワードに集まり、一緒に編みものをする。 そしていつの間にか、手芸をすることよりも集まっておしゃべりをすることの方が 大切だと気がついた、「渋谷手芸部」のお話。

「渋谷手芸部」のはじまりは、ソーシャル・ネットワーキングサイト「mixi」だった。海外の手芸サイトやブログを見るのが好きだった山下多恵子さんは、日本でもオシャレな手芸をしたいと、「アートする手芸」というコミュニティを立ち上げる。
「編みものというとおばあちゃんのイメージがあるのですが、海外では若い人の間で流行っています。色で遊んだり、キラキラした糸を混ぜたり、アートとして成り立っていて、それがとてもオシャレでいいなと思って」
当時、ニューヨークではニットカフェがブーム。けれど、東京に唯一あったニットカフェは、参加者のほとんどが外国人。そこで山下さんは、ニットカフェに一緒に行ってくれる人をネット上で募り、出会ったのがコミュニティ「みんなで手芸。」の管理者、井上直美さんだった。意気投合した2人は、自分たちで手芸をする場を作ることにする。
決めたことは、集まって、自由に手芸を楽しむということだけ。集まりやすい渋谷を拠点に、気持ちのいい日は公園でピクニックをしながら、それ以外の日は公民館を借りて活動することに。誰でも、何を作りたい人もウェルカム。年齢層は、学生から山下さんの親世代までと幅広く、男女問わず20名ほどが集まる。何でもOK、といってもほとんどの人がするのは編みもの。道具が編み針と毛糸だけでよく、外でもしやすいからだ。

発足して3年半。月一回の集まりはコンスタントに続き、メンバーも固まってきた。最初の頃は黙々と手芸をしてしまい、山下さんから話しかけないといけない時期が続いた。でも最近では、集まって手芸をするという場に参加者みんなが慣れ、新しい人が入れば積極的に話しかけたり、それぞれが自然と楽しめるようになってきた。
「手芸好き、しかもこういう手芸部に参加する人って、もともと積極的でオープンな性格の人が多いんです。みんな器用で、人と出会うことを大切にしている人ばかり。手作りの料理やお菓子を作ってくれる人もいますよ」
編みものは好きだけど、それほどやったことがない、まわりに編みものをする人がいないから、他の人がどんな風に作っているのか知りたい。そう思って手芸部を始めた山下さんが、みんなで編んで気がついたこと。
「手芸をする以外の楽しみが、どんどん増えているんです。今までは誰かと一緒にというと、編みもの教室しかなかったと思うのですが、ここには先生もいないし、もっと気軽に、自分たちで楽しみたいという人たちが集まってきます。みんなで編んで、見せあうと楽しいし、褒めてもらえたりして。それでモチベーションが上がって、どんどん作りたくなるんです。今となっては、1人で手芸をすることは考えられません」
共通の趣味を持つ人が集まり、ごはんを食べて、お茶をして、手を動かしながらおしゃべりする。それが、みんなで一緒にすることの楽しさ。手芸というキーワードを通して、世代を超えた人の輪がどんどん広がっているようだ。


山下多恵子 (やました・たえこ)
渋谷を中心に、手芸を愛する人たちが集まって手芸をする「渋谷手芸部」を主宰。月1回をペースに、活動している。10月9日から14日まで、art-bookshopにて、渋谷手芸部文化祭を開催。また、手紡ぎ糸のオンラインショップ「imokuri」も運営。
「渋谷手芸部」
http://blog.livedoor.jp/shugeibu/
「imokuri」