
都会に暮らしながら田舎で野菜を育てるどちらも選択した新しい暮らしのカタチ
都会で暮らしながら、少し離れた自然あふれる場所に畑を作り、週末には思い思いの野菜や果物を育てる……北欧デンマークで「コロニヘーヴ」と呼ばれる、家庭菜園を楽しむライフスタイルが今、少しずつ話題となっている。『イェンスの畑づくり』という著書を出版、率先して紹介しているのが、東京在住の北欧料理研究家イェンス・イェンセンさん。
東京から電車で一時間あまり。神奈川県小田原市に、一年ほど前からコロニヘーヴを一から作り、毎月2~3回ほど通っては、手入れをしているイェンセンさん。育てているものは、春から夏はトマトやラディッシュといった夏野菜、秋から冬にかけては白菜やキャベツなど、他にハーブや類、デンマークでは見かけなかったごぼうやシソ、桃など多種にわたる。「その間、菜園の面倒はどなたが?」と伺うと、「現地小田原の人たちが僕の代わりに見てくれています」という微笑ましい言葉。菜園を一緒にシェアしている地元の人たちとのネットワーク、普段接することの出来ない世代の人たちとの交流を通して、自分の心が豊かになっていったという。

神奈川県小田原市の山間にある「コロニヘーヴ」には、自然の恵みがいっぱい。まだ育つ途中にあるトマトや、これから花を咲かせる予定の野菜など、地元に住む近隣のこどもたちにも協力してもらい、楽しく畑仕事が行われている。 photo by ei-publishing
「この前、よく遊びに来る子どもたちに“畑作っていい?”ときかれ、“いいよ、君たちの畑だよ”と言ったけれど、どうすればいいのか彼らは何にもわからない。で、僕も何にも指示しない。それで5分経つともう“あー疲れたー!”と言う。でも今度は、とりあえず何か種を植えてみる。でも何も育たない。そうすると“どうして何も育たないんだろう?”と考え始め、これも勉強になる。そうしてだんだん自然とかかわることを知るんですね」とイェンセンさん。こうした活動は地域でも噂となり、行政が後押しする動きもあるという。「『コロニヘーヴ』を拡張させて、コミュニティーをもっと広げたい」というイェンセンさんの夢はますます膨らんでいく。 「結局、もっとみんな手を使いたいんだと思うんです。東京では手を使うことがほとんどないばかりか、行き過ぎた利便性の追求で、どんどん動かなくてもよい生活になる。結果メタボリックになり、それでどうするかと言えば、高いお金を払ってジムに行く。それより僕は、もっと自分で手を使ったり動いたりすればいいと思う」
自分で土をいじり、食物を育てる。人間の原点に戻った生活を通し、生きることの意味を知る。デンマーク流のライフスタイルが教えてくれるもの、それは国を越えた生命の源なのだ。

Jens H. Jensen(イェンス H・イェンセン)
デンマーク・コペンハーゲン出身。ロンドンで日本語と言語学を専攻、2002年来日。北欧料理研究家として多岐に渡り活躍する一方、北欧のライフスタイルの紹介「コロニヘーヴ」のほかに、北欧でのDIY的生活、デンマークでのエコライフの普及などにも力を入れている。