
ミュージシャンとして、父親として、そして、人として。
人生の旅のまっただ中にいる曽我部恵一さんの、胸にくぅっと迫る軽やかかつ、深いメッセージ。
僕は旅行がすごく好きで。知らないところに行って、いろんなものを自分に出会わせることで、自分自身が持ってる内面世界 がもっと広がると思ってたんですよ。一生ずっとそうやって暮らしたかったんです。いつでもどこでも行けて、制約からも自由っていうのが理想だなぁと。そう いう意味での旅をしたいなぁと思っていました。当時は、バンドやってましたけど、いつでも辞めたければ辞めてもいいし、お金のためにやってるんじゃない し、将来もとくに考えてなかったんですよね。そんな生活を満喫していたんですけど、子どもができて家族ができたことによって、自分の人生を作っていかない といけない立場になった。それと同時にバンドも辞めて、自分の人生が変わったんです。
昔はもっと、遠くに行くことが知らないものを見る術だったんですけど、本当はそんなことなくて。それからは、日々普通に八百屋さんに買い物に行くようなことを続けるのが、自分にとって旅だなぁと思えるようになった。
だ から、実際に旅行に行くことをあきらめたわけじゃなくて、すごい途方もない人生の旅の中にいるんだなって思ったんですよね。バックパッカーが旅人だって何 となく認識があるじゃないですか。全然そんなことなくて、みんな旅してると思いますよ、子どもを育ててるお母さんとか。日々、知らないことに出くわしてい くのが人生で、子どもたちも同じでしょ。たとえば、一緒に生活してる人と新しい会話をすることで、毎日が新しい一日になるし、そのつながりが旅。そういう 風に捉えると楽しいし、また失敗があったとしても次が訪れて、新しい事柄につながっていくだろうし。だから、大事なのは、自慢のコレクションを家にズ ラーッと持っている物質的なことではなくて。今日の天気や、明日は天気も空の色も違うんだろうし、そういうことがかけがえがない。
僕 は、こっからここがミュージシャンで、こっからここがオフでとか全然ないですね、そういうのがつまんないなと思ってるし、全部まとめて自分の生活なんだと いつも考えてます。だから、別にすごいかっこよくって、お金持ちでロックスターじゃないけど、こういうのも楽しそうでしょっていうのを、音楽ではメッセー ジしたいなとは思ってるし。誰かよりもちょっと上で裕福じゃないと不安になるし、一個の失敗ができない世の中だけど、生活も子育てもそこまで慎重にならな くても、なるようにしかならない。僕は、失敗がありまくる人生でもいいんじゃないかなって。人生を楽しんでいたらいいんじゃないかなって思いますけどね。 もうちょっと肩の力を抜いて。
曽我部恵一( そかべ・けいいち)
1971年生まれ。香川県出身。ミュージシャン。〈ROSE RECORDS〉主宰。
ソロ以外にも曽我部恵一BAND、曽我部恵一ランデヴーバンドでリリースやライブ活動を展開。
最新作は曽我部恵一BAND『キラキラ!』。