
ただ日常から逃避するためではなく。旅することで何かを得て、日常に役立ったり、社会に還元できたり。そんな前向きなアクションを呼び起こす、さまざまな旅のカタチ。
以前勤めていたデザイン会社を退職する間際から、今の雑貨屋さんを始めるまでの間。買い付けも兼ねて向かったスウェーデ ンへのひとり旅。一ヵ月という長丁場ゆえ、小山さんが自分に課したのは「知人のいない街に何も予定を決めずに行き、現地で出会った人から情報を得て、勧め られたことぜんぶをやる」ということ。「友だちがいると頼っちゃうから。不安? なかったですね(笑)」なぜなら小山さんには、ポラロイドカメラという味方があったから「毎日撮った写真を日記に貼ってたんです。すると向こうで誰かに出 会って、うまく英語を話せなくても、これを見せると盛り上がる。それに『ここが好きだったら、僕の友だちがやってるあそこに行くといいよ』とか言われたり して」。そうして予定もどんどん埋まり、出会った人も数知れず。でも一番大きかったのは偶然にも日本語が堪能なマリーとの出会い。彼女は友人と5人でシェ アして暮らしており、小山さんはそこに泊まらせてもらっていた。
「ホテルでもなくひとり暮らしでもない現地の生活はとにかく楽しかった!」。それだけに帰る時はお互いさみしい思いをしたものの、なんと1年も経たないうちに、今度はマリーが東京で暮らすことに!
「今はこのポラ日記が、日本の友だちにマリーを紹介するツールになってます」。旅が縁を、縁は奇跡を呼び寄せる。まさに、それを象徴するような話。

現地で買ったきれいなデザインのノートに、ポラロイド写真を貼った日記は一ヵ月で4冊にも!辞書のように分厚くなったこのノートが、小山さんにとって「無理だと思ったことでも、やればきっとできる」と、自分への自信につながる、大切な宝物になっている。
小山奈々子 (こやま・ななこ)
書籍、展覧会、店 舗の企画、デザイン、プロデュースを手掛ける。主な仕事に「ただのいぬ。プロジェクト」「活版再生展」などの企画、ディレクション、著書に「ただのい ぬ。」(角川文庫)、企画監修「写真以上写真未満」(翔泳社)など。代官山で毎月変わる雑貨屋「gg」運営中。